海外研修も含めとうとう最後の本研修の日!最終日は岐阜県池田町にある土川商店内のアイキャン事務所岐阜出張所にて行われました。
午前中は、土川商店を営む土川修平さんのお話を伺いました。土川商店は100年以上続く商店で、土川修平さんは池田町で生まれ育ち、東京の大学を卒業された後、土川商店を継ぐ前は岐阜県内で30年間ほど高校の教員をされていました。お話では、土川さん自身の経験を基にしたお考えを知ることができ、とても印象的なものでした。
まず、教員としての経験から、私たちが使っている言葉というのは、いろんな要素が切り捨てられた「象徴」であると土川さんは考えています。教壇に立って話すとき、「象徴」としての言葉をつじつま(整合性)が合うようにするため、都合のいいように物事を話していると感じていたといいます。つまり、教壇に立って話すことは真実ではなく、「教壇に立つと嘘をつく」ため、教壇に立つことに疑問を持ちながらも教員を続けていたようです。また、評価に関して、学校の行事において賞を生徒につくらせなかったといいます。評価というのは、こちらが設定したものを目指すことになります。土川さんは、“子どもは次世代を担うものであり、大人の責任として、望む社会で役に立つ人になってもらうためにおいてのみ評価するのであれば、評価でき得る”と考えていますが、そういう意味の評価であっても正しいかどうかは分からないとおっしゃっていました。こういったお話をお聞きすることで、教育はどうあるべきかを改めて考えさせられました。
また、土川さんは、教育委員会において、高等学校文化連盟の活動や一般の文化活動にも携われていました。その中で、アート(芸術、文化)とは何か?と考えるようになり、アートは新しい価値観を提言するものであると考えています。つまりそれは、今の価値観を否定することであるため、今の価値観を守ろうとする行政としてではなく、市民活動として文化活動をやらなければいけないと土川さんは考えるようになりました。それが、地域でギャラリーなどを始めたきっかけになったようです。また、土川さんは“とてもいいアートを見ると人は善人になる”と考えています。善人になるというのは、相手の大変さを自分のことのように考えるということを指しているようです。人は、自分が1番大事であり、次に大事なのは家族、その次に大事なのは友達、自分の名前を知っている人というように広がっていき、さらに広がれば人間までも含まれます。この、どこまでを自分のことのように考えられるか、というのが社会の豊かさであると土川さんは考えています。このような考え方は、土川さんの父親の「当たり前のことを当たり前に思える人間になれ」という教えと通ずるのではないか、と土川さんは考えています。当たり前のこととして、悲しい人を慰める、苦しい人は助けるということが例にあげられていました。時代とともに「正しい」とされる価値観は変わっていきますが、この「当たり前のことを当たり前に思える人間になれ」というのは普遍的な価値感なのではないかと土川さんはおっしゃっていました。そして、アートは、この「当たり前のことを当たり前に思える」ようにする範囲を広げる手法の一つと考えています。また、多文化共生もどれだけ自分のことのように捉えられるかが課題ではないかとおっしゃっていました。アートの話から、自分事として捉えること、社会の豊かさ、多文化共生について考えることができ、とても興味深かったです。
お昼は、土川商店の向かいにある土窯で焼いたピザと、池田町でとれたシカのお肉も入った豚汁を、青空の下でいただきました。都会では経験できない、自然の恵みを感じられるランチはとても素敵でした!
午後は、研修の集大成ということで、海外研修、国内研修全体の振り返りをまず個人で行い、グループに分かれてシェアしました。振り返りでは、ICANさんが用意して下さったシートにそって、「感情グラフ」、「印象に残っている見たこと、聞いたこと」、「学んだこと、気づいたこと」、「キーの人物」を研修1日1日ごとにそれぞれ考えました。ICANの方が、研修の課題はいかに自分事化するかということだとおっしゃっていたように、振り返ることで改めて、この研修が自分にとってどういうものであったか、これからにどうつなげられるかを考えることができました
研修を通して、様々な背景をもつ人に出会い、自分の知らなかった社会、考え方などに触れることができたことに感謝です。この経験を今後の糧にしたいです!